中野中の足裏庵日記  -15-   ― 加藤正嘉 <風の景> ―

高輪画廊展覧会、加藤正嘉展写真


某月某日
しばらく以前まで、高輪画廊の真中に画廊の主でもあるが如く、梯形の立体作品が鎮座していた。黒々と塗られた配管や梁などがむき出しの天井に届きそうな大きな白木の作品で、どっしりと堂々と、 いかにも重そうに。でも少しも威圧感はなく、何がしかの親しみや懐かしさをもたたえてそれは立っていた。 それが加藤正嘉さんの作品だとは知らないでいた。いつの日かその作品は画廊から消えた。求める人がいて今は某レストランで多くの来店者の目を楽しませているという。

某月某日
加藤さんはタブロー作家だと心得ていた。 布や厚紙(ボール紙)や板切れなどをコラージュして矩型をベースに造形しながら、絵具と共に砂をまぶしてマティエールを作っている。 しかし今更に思い返してみれば、トロント(カナダ)での昨年の個展の折には現地に1か月余の滞在中に、地元の木を使って、それはスライスした平面的なものであったにはせよ、 木による制作は試みてはいたのだ。タブローだけではおさまり切らない表現意欲と、木に対する親しみが色濃く加藤さんの思いにはあったのだ。

某月某日
会場には、小ぶりの立体作品がいくつも並んだ。扁平な半円筒形の松材に穴をあけたり、長方形にくり抜いたりして、紅殻色や鉄漿(お歯黒)に 塗り上げている。 丸や角穴がなで肩の丸みのあるフォルムと重なって、それらは顔に見えてくる。 そしてその優しげで人懐っこい表情は、そうだ、お地蔵さんだ、と思い至るのにそれほど手間は要しない。 野仏のように、地蔵さんのように愛らしく、親し気である。つい丸い顔を撫でてあげたくなる。
床の間に飾ってもいいが、サイドボードや書棚、あるいは下駄箱の上などに一輪の花と共にさりげなく置きたくなる、そんな自然な装いがある。
加藤さんのシリーズ<風の景>の立体は、他に白木の組み合わせによるシャープな造形も出品されているが、通底する思いは作者の優しさであり、素朴な生命を賞でる心であろう。(加藤正嘉展ー風の景ー 11/11〜/23)

高輪画廊展覧会、加藤正嘉展写真2

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