中野中の足裏庵日記  -27-    深まる感傷旅行―加守田次郎展

加守田次郎展

加守田次郎氏(左)と筆者(ヴェロンにて)



某月某日
昨年5月に次ぐ2度目の個展(11月10日〜20日)。60号大から小品の新作約20点近くが並んだ。前回にくらべ、全体にずいぶん明るくなった印象が強い。加守田次郎の心の旅路―感傷旅行はいよいよ深まりゆく様相を見せている。

某月某日
去る8月の後半、ヴェロンで10日余り一緒に過ごした。一緒に食事をし、ドライブを楽しみ、夕焼けを眺め、ワインを傾けながら満天の星に酔い痴れた。河向こうの村まで散歩したり、灼熱の下を隣り町まで単独歩行を彼は試みたりもしていた。
見はるかす刈り入れの済んだ麦畑、ゆるやかにうねる大地、吹きわたる光を孕んだ風、澄んだ大気の夏の北欧の風土が加守田にどんな影響を与えたのか、あるいはわずか10日余ではそれは思い出として過去に捨て去られてしまうのか。
しかし、さりながら、である。加守田の孤独で感じ易い心は、私が想像する以上にヴェロンの光と風に感応していたようである。
「水差し」(15M)にあらわれるバーミリオン系の赤はヴェロンの夕焼けの茜を連想させ、「空」(10F)はこれまでにあまり登場したことのない緑や紫系が用いられ、新境地を示すとともにやはりヴェロンの匂いが感じられる。加守田の意識はともかく見る側には、ことにヴェロンでわずかでも一緒した私には、そう見えてくる。
あるいは「樹」(60F)は前回よりも明るさを増しながら、深深とした情感が瑞々しく躍動して、今作中秀逸の出来と私は評価したい。

某月某日
感傷、ということばにはどこかセンチメントな思いが含まれるが、本来は感じやすい心を指す。感傷的となれば涙もろさに通じるが、加守田の心は、繊細な働きによって彼自身を刺激するのだ。
もともと北関東育ちの彼には、風土としてブルゴーニュ地方に違和感はないのではなかろうか。そして濃密に感じさせる大地、広い空。加守田は初めての土地に多分、懐かしさを感じ、満腔の思いで大気を深深と吸ったに違いない。やさしさと瑞々しさ、そして懐かしさを今回の作品に感じる故である。
彼の感傷旅行は一段と深まリゆく。


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