【中野中の足裏庵日記】 ―30― いろはにほへと
2004/03/30記
某月某日
久しぶりに高輪画廊から案内が来た。表には「花展」(3月22日〜4月3日)とあり、裏面には三岸節子の「花」がカラー紹介されている。ピンクの花房を黒太の線が囲っている佳作で、画集にも収蔵されている1998年の制作になる。黒い太い囲みがいかにも三岸節子らしく、初日に見参するのを楽しみにしていた。


某月某日
ところが初日のその日は、1日中机の前から離れることが叶わず、終日執筆を余儀なくされてしまった。勿論、〆切を大幅にずれこませた自分が悪いのだが、残念なことをしてしまった。しかもその週は地方へ出かけたり、たまたま他の〆切が重なったりで、結局、画廊へ出かけたのは2週目に入ってからになってしまった。
件の作品はウィンドーに飾られていた。ちょっと凝り過ぎかと思われる額におさまって、しかし絵の強さがそんな額の危惧を吹き飛ばして、ピンクがひときわ甘やかなふくらみを見せていた。画廊内は百花繚乱、いや正確には14作家の18点が、それぞれの顔付きで咲いていた。ベテラン作家の五百住乙人、桑原正昭、近馬治、三岸黄太郎の先生方は自分の色、あるいはスタイルをもってその魅力を花咲かせ、加藤正嘉のコラージュの花は氏としては珍しいモティーフと思うが、重厚な存在感を見せていた。
中堅の佐藤照代の2点はいかにも艶やか、高瀬あおいの薄明を掬い上げたようなシクラメン、富沢文勝の「闇」の中に浮かぶ色、あるいは星野鐡之の「薔薇」、森本宏起の「雛芥子」他もそれぞれの魅力を放っていた。


某月某日
若手の作品に惹かれた。いずれも写実を根っこに置きながら、見せ方は3人3様、個性を発揮していた。
小笠原美環はシンプルでダイナミック、白の厚塗のヘラ跡を残す地に黒(濃紺?)で柏の大きな葉の形のみを印して、瑞々しい。大橋みやこ「蝋梅」は伸びやかな空間がかぐわしく、若々しい感性が何よりも魅力だ。加守田次郎はモノトーンながら彼らしい繊細なしなやかさに惹かれる。彼ら若者の大きく育つことを期待したい。


某月某日
花展に合わせるように東京は桜が見頃。陽気も寒暖の繰り返しを過ぎて本格的に春爛漫。と、画廊を出ると間もなく雨が。色は匂えど散りぬるを・・・、春雨じゃ、ぬれて行こう。


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