【中野中の足裏庵日記】―34―ESPERANCE
2004/09/07

某月某日
台風18号が今現在、九州・四国・中国地方のほぼ全域を圏内に下関辺りを北上中という。
オリンピックの間も終わってからも台風とその被害情報は休むことを知らない。今年はまったく台風の当たり年でうんざりする。しかしこれもエコロジーのバランス崩壊が一因となれば、その根は深い。少しでも被害の少ないことを願うばかりだ。


某月某日
長い夏休みを終え秋の美術シーズンを迎え、若手新人5作家による《ESPERANCE》の第一回展が開催中(9月6日〜18日)。案内状に、それぞれ20代後半から40代前半で将来の更なる期待感をこめてエスペランスと名付けたとある。エスペランスとはフランス語で希望(の的)、期待(の対象)の意であることは言うまでもない。
一般に人は誰でも、若い人は羨ましい、と言う。
羨ましいの内訳はいくつもあろうが、その一つに年令の若さがあり、これから先の長い活動への羨ましさがあるのだが、画家にとってそれはそれほど単純なことではあるまい。つまり加齢によって絵が良くなるなどという保証はないのであり、年功など少しも当てにならない。
老境に入り始めた私など若い人に、先が長くて苦労が多くて大変だネなど嫌味の一つも言いたいのだが、それも年寄りの冷水、結局は羨ましいことの証左になり兼ねない。


某月某日
故亀井勝一郎は<作家は処女作に向かって円熟する>と言っている。処女作をいつのどの作品に措定(そてい)するかはともかく、若い時の仕事にはその人の根幹的なテーマが包括されているということだろう。
これに続けて亀井は、その道中で刀折れ矢尽きて野垂れ死にするのが大方の作家の運命である、云々と。若い人の先行きを心配するのは私ばかりではないのである。若人よ、心して取り組んで欲しい。


某月某日
出品作家は大橋みやこ、谷本優子、加守田次郎、森本宏起、小笠原美環の5名、各作家20号前後4、5点の出品。それぞれの作品に触れる紙幅がないので失礼する。是非会場へ足を運んで欲しい。 近くの汐留のビル群は新しい都市風景として一見の興趣もある。




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