【中野中の足裏庵日記】―39―『佐藤照代展』掉尾を飾る
2004/12/25

某月某日
高輪画廊歳末恒例となった佐藤照代展(12月13日〜25日)。一昨々年は風景の中に配した人物、一昨年は花尽くし、昨年はペアの男女が光彩を放った人物ばかりに徹底。今回は人物、猫、そして風景画と、モティフ的にはバラエティを持たせた。


某月某日
照代さんの手法的特徴は金箔の地に著色(描写)されていることで、殊にスポットライトを浴びると、油絵具の属性である光沢性と透過性が際立って、きわめて発色が良く、彩色の主張が明晰に伝わってくる。
「figure of human」(人物シリーズ)は、案内状掲出の「nodding」(30F)、男女ペアの「bonds」(30F)、そして「restraint」(30P)の3点、「restraint」(束縛)は半身の自画像のようだが、眼の表情などに内面性が感じられる佳作とみた。
これまで私は彼女の作品に関して色彩ばかりにウェイトを置いてきたが、今回あらためて描線の達者さに気がついた。「restraint」の自画像もそうだが、例えば「nodding」(あいづち)の、こちらに向けた眼差し、頬から頤(おとがい)への微妙な描線、添寝する猫を抱く手の指の色気、そして衣服の描写線の対象的な使い分けなど、鮮烈な色彩を支える線の力をあらためて感じた。今更?と言われそうだが・・・。


某月某日
猫の作品2点「cooperation」(協調)、「calmness」(冷静)は、草葉の縁どりの強さに対し、猫のずんぐりもっくり感が少しも負けずに存在感をもっていて興趣ある世界をつくり出していた。猫など実に簡単(そう見える)にとらえながら確かなのは、日頃の同居生活でよほど知悉しきっている強味なのだろう。


某月某日
猫に較べると一連の風景作品にはその折その場での様々なイメージが豊かで、かつ人物シリーズとは違った画家の思い入れがあって面白かった。夜の黒々としたセーヌ河畔の「Scenery-Paris」(30F)などは、画面中央奥に月明りにボウッと白く浮く建物や水面のニュアンスなど佳作だった。正直に言って風景いいじゃんといった感想をもった。「Scenery-Auch」(30F)の街路樹とパースペクティヴ、題名は忘れたが入口すぐ右手の小品も印象に残っている。




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