【中野中の足裏庵日記】―40―黒木邦彦の青のシンフォニー
2005/04/01

某月某日
黒木邦彦さんと初めてお会いした。高輪画廊で開催中(3/28〜4/07)の黒木邦彦展の二日目である。作品も初めてだ。日本でも何度も個展を開いているというから縁がなかったのだろう。
画歴を見ると、ル・サロンで金賞・銀賞・銅賞・セラフィヌリボワ賞・フランス国際展でオディロン、ルシュール、アドリアン賞を、オンフルール展で名誉賞、そしてドートンヌでは会長コーナーに特選展覧されている。現在、サロン・ドートンヌ会員、ル・サロン無鑑査会員、仏国風景画家協会会員とある。
やはり海外、ことにフランスでの活躍が多いようだ。


某月某日
会場にはヨーロッパ風景があふれ、どの作品も青を基調色としている。眼路の限り青い野原や青い山が広がっている。
「私はいま、青の時代です」と黒木さん。
「では次は、ピンクの時代ですね」と私。
「いえ、ピンクはもう終えました」と黒木さん。
そのピンクの時代の名残リのように、青の広がりの中にピンクが突然といった感じで登場する。画面のアクセントとしては目立っている。補色関係で彩り感も悪くない。しかし、いかにも唐突の感は免れない。デザイナーから転進して画家になった黒木さんには、どうやらサービス精神が身についているのかも知れない。ピンクの使い処と青緑の諧調ともう少し緊密な構成力がつけば、もっともっと魅力的になるだろう。
今でも、十分に気持ちの良い作品である。サントヴィクトワール(この岩山さえも青々としている)を望む南仏の風景(『フランス田園序曲』25号や『フランス田園協奏曲』20号)など爽快である。


某月某日
30点近い作品の中に小品(0号)の『セザンヌの山』に惹かれた。青色系だけで描かれ、山、木、田園の構成が緊密でありながら窮屈さが少しもない。そればかりか実にゆったりとして格幅もある。余分なものは何もなく、最小限の要素で十分に表現している。
これが黒木さんの原点だろう。大きくしたからといって。あまりサービス精神は要らない。セザンヌのようにストイックがいい。
フランス田園<交響曲>の誕生が楽しみだ。




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