【中野中の足裏庵日記】―54―虫の眼、鳥の眼―ジョン・コバーン来日展
2006/04/23

某月某日
ジョン・コバーンの初の来日展が有楽町のプランタン銀座で開かれた(4月4日〜10日 銀座・プランタン ギャルリー・ドゥ・プランタン)。
といっても、ジョン・コバーンという名など誰も知らない。たまたま私は、一昨年のカナダ・トロントでの三岸黄太郎展(ベケット画廊)の折に紹介されたから知っているが、それでもカナダ生まれで、カナダやニューヨークで何度も個展をやっているアーティストだというくらいのことで、あとは明るく愉快で賑やかな人だという印象だった。

某月某日
ジョンさんの作品はイラスト的だと言えるだろう。今風に言えばドローイングということだ。モティフはもっぱら都会の景観や風俗を軽妙にとらえ、アーバン・アダルト的世界の、シャレてオトナで、トレンドの風が吹いている。それが思いのほか会場のプランタンの雰囲気とマッチし、ことにも中年から若年の女性にはうけていたようだ。

某月某日
パリの街並やエッフェル塔、ニューヨークのマンハッタンの高層ビル群などがポップな感覚と伸びやかでセンシティブな線で簡潔にとらえられる。ときにウィンドーショッピングを楽しむ若者にズームアップした作品もあれば、遥か高みから見下ろすようにとらえたビル群が登場するし、ゴージャスなシャンデリアのある部屋の窓の向こうに近代都市がのぞまれ、太陽がサンサンと照っていたりもする。

某月某日
地上を這う虫の位置からフォーカスする眼、鳥のように大空から街並を見下ろす眼、ジョンの眼は自在に移動し、独自の着地点を見付けだす。その鮮麗な感性が陽性の性格に支えられて何とも魅力的なのだ。
私は会場で彼のあふれる笑顔で迎えられただけで幸せになり、作品を見てすっかり楽しくなり、批評を求められて、思わず<虫の眼と鳥の眼の持主>と口走っていたが、その言い回しをジョンはいたく喜んでくれたようだった。
シニカルな現代文明批判と、今を大いにエンジョイしようとする向日的な姿勢が拮抗した世界は、日本に多くのファンを生んだことであろう。
ミスター・ジョン, シー・ユー・アゲイン!!




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