中野中の足裏庵日記(79) まったりと流れる時間-大橋みやこ展       
2010/11/01記


中野中


大橋みやこ


「hu-shu」


某月某日
高輪画廊では1年半ぶり、7回目の個展(10/18~30)。前回は樹木のある都会的な雰囲気の風景を印象的に覚えているが、今回は花々が中心の発表。
「木々の間から」(M50)、「between trees」(M30)などを含め、「はなはな」(F0)まで20点の油彩作品のうち、花のモチーフが大半でそれらは「hu-shu」とタイトルされている。
「hu-syu」『とは<風趣>のことであり、おもむき、風致、風韻、と広辞苑にはある。


某月某日
大橋さんの作品はほぼデビュー当時から見る機会に恵まれているが、彼女は何を描いても(といっても花や樹や樹のある風景がもっぱらのようで)、花や樹を明確に縁取りしたり、明暗で立体感をクッキリさせるということはしない。どちらかといえば、大気の中から浮かび上がってくるような、ぼんやりした、焦点が少しブレたような雰囲気が持ち味となっている。


某月某日
花芯をのぞき見るような作品、伸びる茎の先の花を横からとらえた作品の二つに大別できそうで、彼女の作風の持ち味はそれぞれにあるが、F30号の八重のトルコ桔梗(とハッキリと花種はわからないが)を横からの視線でとらえた作品に、持ち味が良く見られたと思う。全体に滲むような色が広がり、茎も花も溶けゆくような気分で、ゆったりとした、まったりした時のよどみがたゆたっている、といった趣きなのだ。空間に花が溶けこんでゆく、それがゆったりした時空間となり、しかし、だからといって花がグチャグチャに正体を失うわけではなく、色の響き合いの中でおっとりとその存在は保っている。そんな雰囲気に<風趣>を彼女は感じたのだろう。


某月某日
くっきりかっちりは無縁で、おだやかに滲みゆく色に形は溶けゆきながら、時はまったりとたゆたう。大橋みやこの世界に<雅趣>が漂いはじめた、と私は感じはじめている。 (2010.11.1識)






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