中野中の足裏庵日記(86) はじまりのはじまり・・・大橋みやこ展       
2011/10/12記


Impression(S40)


しかくの流れ(S40)


Somewhere-ものしりがおのものたち(M100)


某月某日
大橋みやこさんの、高輪画廊での1年ぶり8回目の個展(10月3日~15日)。
<少しずつ自分の呼吸ができるようになってきた今、自分の”色”が見え始めてる。新しい扉を開く・・・予感がする>とDMにある。そのDMには「Start here」(F20)が紹介されている。 新しい境地が見え始めている。そんな予兆を感じさせる作品であり、みずからも新たな手応えを持ったという表明の題名でもあろう。


某月某日
もう10年以上も前になるであろうか。高輪画廊でのデビュー個展を見て、不遜な言い方が赦されるなら<この娘(こ)はイケる>と直感した、鮮烈な登場だった。 明るく伸びやかで屈託のない広がりは新鮮で瑞々しかった。何よりも色彩感覚のセンスは抜群だった。その才能への嫉妬から必要以上にキツく当たってしまった記憶がある。
そんなデビューではあったが、描き進むほどに悩みは増していったようだ。”屈託のない”と感じた色調にすでにその後の様々な課題は含まれていたようだ。それは絵画上の問題ばかりでなく、生きることその根幹に根ざす問いでもあったのかも知れない。現にこの数年はいささか低迷気味であったことは否めないであろう。


某月某日
100号からSMまでの20余点からなる作品群をみると、悩みを引きずりながら新たな出口、というよりも方向性を見い出し、そのことにかなりの手応えをつかみつつあることが見えてきた。
「ゆうのはな」2点(共にS25号)は明らかにこれまでの路線上にある作品だが、同じ流れの中にありながら「Impression」(S40号)は完成度の高い佳品だ。画面構成はまことにシンプルで(彼女の作品はほとんどがそうだが)、左下から右上に花(葉)をつけた枝が伸びている、それも淡々(あわあわ)としたフォルムで空間に融けこみながら、イエローオーカーの光を孕んで滲むような色調のなかに豊かに広がっていく。 謂わば、語りとしては寡黙にして深々とした情感は密度が濃いのだ。


某月某日
そこ(上記の作品)から一歩踏み出したのが「Start here」であり、「Somewhere_ものしりがおのものたち」(M100号)や「しかくのながれ」(S40号)である。 何よりも構成も色調も明確になった。基本的にタテ・ヨコ構成をとり、色彩は強い色が使われるようになった。とはいえ、ものの形をそのまましっかり描き写しているわけでもないし、基本的に色調は相変らず黄や淡いオレンジやピンクである。にもかかわらず、そこに従来になかったイメージを抱くのは何なのだろうか。
一番に思うのは、描かれたモノと画家との距離間がかなり明確になったことではないか。距離間とは、時空間だけでなく、思いなり情愛なりのハートの係りも含めである。だから<間>が的確になり、的確さが彼女にある確信を持たせたのではないだろうか。
そのことが、空間を含めた存在感(存在そのものではなく、あくまで存在感)を深めながら明確になってきたのであろう。
はじまりがはじまった。

個展が始まって一週間、彼女に未だ会えないでいる。ぜひ会って以上のことも含めいろいろなコトゴトを語り合ってみたい。
(2011.10.12識)






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