中野中の足裏庵日記(72) 吹きおこれ〈蓬左の風〉たち       
2009/12/21記


赤塚一三
『ふたつの静物』(F8)


山田真二『浜辺』(F4)


蜷」雅夫『バラ』(F12)


某月某日
『蓬左の風』の第2回展(12月1日〜11日)。
〈蓬左〉とは、前回にも説明したが、再度D.M.より引用しておく。
蓬左とは江戸時代に使用された名古屋の別称で、熱田神宮を蓬左の宮と称したことから、その左方に開けた城下町である名古屋は蓬左と呼ばれた。それに由縁してこの名を冠したわけで、出品者5人はいずれも名古屋芸大と愛知芸大の出身者である。リーダー格の赤塚一二が53才で、他は28才から41才という若いグループ展である。
それだけに元気の良い、熱い風を吹かせようという主催者(高輪画廊)の期待がある。果たしてその期待に応える展覧内容になったであろうか。


某月某日
赤塚一三は自分の色味を持っている作家で、色彩感覚にすぐれている。「花」(M20)が3点中では佳作とみたが、「ふたつの静物」(F8)はその感覚まかせで、造形・構成共に詰めの甘さがあるように思うが、如何だろうか。

山田真二は木立ちや建物を面的に構成し、ヴァルールと空間構成で奥行きをつくって興味深い仕事を展開している。対象への感情移入のない、突き放した心理的距離感に独自の味わいを発揮するが、時につくりモノ的な無表情な生硬なモノに陥る危うさがある。

蜷」雅夫の「バラ」(F12)は今展の収穫とみる。スケッチを十分にしてから、そのイメージ(残像)で描いているのではないかと思うが、花も壷も自在で、それでいて少しも崩れていない。全体に厚塗りの重厚さの中で濃紺や緑・赤等の混色による黒色が美しい。

大橋みやこは画面に漂う空気感の醸成に成長が見られる。「ゆるりと」(F30)の、漠と浮かび揺曳する建物群の描写はかなり狙いが出たのではなかろうか。「キオクノムコウ」(M15)は画面右上をよぎる木の入れ方には疑問を呈しておきたい。

最若手の山内大介の5点はそれぞれ描写手法も自分のスタンスも違って、良く言えば多様な試みに挑戦して意欲的、批判的に言えばバラバラで、どこへ行こうとしているのか、皆目わからない。が28才という年令とキャリアを考えれば、いろいろ試みて画嚢を肥やす今の行き方を歓迎すべきなのだろう。5点中、「CARRE」(S20)を推したい。矩形構成による遠近が新鮮で伸びやかだった。がどこか描きっ放し感があって詰めが甘い。しかし伸び代の大きさは期待できる。


某月某日
勝手な寸評を書いたが、これもすべて〈蓬左の風〉よ、吹き起これ!との思いからである。第3回はいっそうのご精進を願っておく。 (2009.12.21識)






大橋みやこ
『キオクノムコウ』(M15)


山内大介『CARRE』
(72.5×72.5)




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